帰化・韓国籍の親の相続手続き|韓国の戸籍・証明書の取り方

「父は日本に帰化していたのに、相続手続きで韓国の書類が必要と言われた」「親は韓国籍のままだったが、自分は帰化していて韓国語も読めない」――。日本で生まれ育ち、日本で暮らしてきたご家族でも、親や祖父母の代に韓国籍だった方がいると、相続のときに思わぬところで手続きが止まってしまうことがあります。この記事では、帰化した方・韓国籍の方が関わる相続について、どの国の法律が適用されるのか、ケース別に必要な書類、韓国語がわからなくても進められる書類の取り方まで、司法書士がわかりやすく解説します。
目次
- 帰化・韓国籍が関わる相続で、こんなお悩みはありませんか?
- 帰化・韓国籍の相続で「適用される法律」の決まり方
- 帰化していても相続で韓国の書類が必要になる理由
- 【ケース別】帰化・韓国籍が関わる相続の必要書類
- 韓国語がわからなくても大丈夫|帰化・相続で使う韓国書類の取り方
- 帰化・韓国籍の相続でよくあるつまずき|名前の違い・届出漏れ
- 帰化・韓国籍の相続で、相続登記・預貯金の手続きの注意点
- 残されたご家族が韓国籍の場合は、次の相続に備えて
- 帰化・韓国籍が関わる相続は司法書士へご相談ください
帰化・韓国籍が関わる相続で、こんなお悩みはありませんか?
当事務所には、次のようなご相談が寄せられます。ひとつでも当てはまる方は、この記事がお役に立つはずです。
- 帰化した父(母)が亡くなり、銀行や法務局で「帰化前の韓国の書類も出してください」と言われた
- 親は韓国籍のまま亡くなったが、子である自分たちは帰化している(または生まれたときから日本国籍)
- 家族全員が韓国籍だが、韓国の領事館や行政機関とやりとりしたことがなく、韓国の本籍地もわからない
- 韓国語が読めないので、韓国の証明書を取り寄せても内容がわからない
- 通名(日本名)と本名、帰化後の氏名が違い、同じ人物だと証明できるか不安
こうした帰化や韓国籍が関わる相続では、日本の戸籍だけでは相続関係を確認できず、韓国の書類が必要になることがあります。
帰化・韓国籍の相続で「適用される法律」の決まり方

日本の「法の適用に関する通則法」第36条では、相続は被相続人(亡くなった方)の本国法によると定められています。つまり、帰化した方や韓国籍の方の相続では、原則として亡くなった方の死亡時の国籍を基準に、適用される法律を確認します。
亡くなった方が帰化していた → 日本の民法
亡くなった方が生前に日本へ帰化していた場合は、日本国籍者の相続になるため、日本の民法に従って相続人や相続分が決まります。日本人の相続とルールは同じです。ただし、韓国の国際私法では、一定の要件を満たす場合に、遺言によって相続に適用する法律を指定することが認められています。たとえば、日本を常居所として生活している韓国籍の方が、遺言で日本法を明示的に指定し、死亡時まで日本に常居所を維持していた場合には、日本法を適用できる場合があります。
亡くなった方が韓国籍のままだった → 原則として韓国の民法
亡くなった方が韓国籍のままだった場合は、日本で長年暮らしていたとしても、原則として韓国の民法で相続人や相続分が決まります。ただし、亡くなった方が遺言で「相続は日本法による」と指定していた場合は、日本の民法で相続することができます(後述します)。
相続人(子など)の国籍は関係ない
適用される法律を決めるのは、亡くなった方の国籍です。相続人である子が帰化していても、生まれたときから日本国籍でも、それによって適用される法律は変わりません。また、相続人が日本国籍か韓国籍かで、相続人になれるかどうかが変わることもありません。
| ケース | 適用される法律 | 韓国の書類 |
|---|---|---|
| 亡くなった方が帰化していた | 日本の民法 | 帰化前の分が必要 |
| 亡くなった方は韓国籍、子が帰化している | 韓国の民法(一定の要件を満たす遺言で日本法を指定している場合を除く) | 必要 |
| 家族全員が韓国籍のまま | 韓国の民法(同上) | 必要 |
なお、韓国の民法が適用されると、日本の民法とは相続人の範囲や相続分が異なります。たとえば、配偶者の相続分は子の1.5倍になり、子も父母もいない場合は配偶者だけが相続人になります。また、先に亡くなった子について代襲相続が生じる場合には、その子の配偶者も代襲相続に加わることがあります。
帰化していても相続で韓国の書類が必要になる理由

日本人の相続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をそろえて、相続人が誰かを確定します。子や過去の婚姻歴を漏れなく確認するためです。
帰化した方の場合、日本の戸籍は帰化したときに新しく作られます。帰化前の出生や婚姻・離婚、子の出生などは、日本の戸籍ではなく、韓国の除籍謄本や家族関係登録簿、日本の外国人登録原票などに記録されています。たとえば次のような家族は、帰化後の日本の戸籍には載らないことがあります。
- 帰化前に離婚した元配偶者との間の子
- 帰化前に独立していて、一緒に帰化しなかった子
- 帰化前に認知した子
こうした子も、帰化した親の相続では相続人になります。そのため、帰化前の期間については韓国の書類で家族関係を確認する必要があり、金融機関や法務局からも提出を求められます。
【ケース別】帰化・韓国籍が関わる相続の必要書類
帰化や韓国籍が関わる相続で必要な書類は、家族構成や届出の状況によって変わります。代表的なケースごとに整理すると次のとおりです。
ケース1 亡くなった親が帰化していた
適用される法律は日本の民法です。亡くなった方の出生から死亡までを、帰化の前後に分けてそろえます。
- 帰化後:日本の戸籍謄本・除籍謄本(帰化の日から死亡まで)
- 帰化前:韓国の除籍謄本や家族関係登録簿の証明書(基本証明書・家族関係証明書・婚姻関係証明書・入養関係証明書などから、帰化時期や家族関係に応じて必要なものを取得)
- 必要に応じて:外国人登録原票の写し(出入国在留管理庁に請求)
- 韓国語の書類すべての日本語翻訳文
- 相続人の戸籍謄本・住民票・印鑑証明書
日本へ帰化して日本国籍を取得すると、韓国法上は韓国国籍を喪失します。ただし、韓国側で国籍喪失の届出がされておらず、家族関係登録簿などに国籍喪失が反映されていないことがあります。その場合でも、日本の戸籍に記載された帰化の事項とあわせて確認すれば手続きを進められます。
ケース2 親は韓国籍のまま、子が帰化している相続
適用される法律は、原則として韓国の民法です。
- 亡くなった親の分:韓国の除籍謄本、家族関係登録簿の証明書、住民票の除票、閉鎖外国人登録原票の写し(2012年7月以前の住所や家族の記録)
- 必要に応じて:外国人登録原票の写し(出入国在留管理庁に請求)
- 帰化した子の分:日本の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書
- 韓国語の書類すべての日本語翻訳文
韓国の家族関係証明書では、帰化した子が帰化前の韓国名のまま記載されていることがあります。提出先から同一人物であることの確認を求められた場合は、帰化したときの戸籍(除籍)謄本など、帰化前の氏名がわかる書類を用意します。結婚や転籍で戸籍が移っていると、現在の戸籍謄本には帰化の事項が載っていないことが多いためです。
ケース3 家族全員が韓国籍のまま(3世・4世のご家族など)
適用される法律は、原則として韓国の民法です。必要な書類はケース2とほぼ同じですが、相続人の分も韓国の家族関係登録簿の証明書と住民票で準備します。
このケースで多いのが、「韓国の本籍地(登録基準地)がわからない」「出生や婚姻を韓国側に届け出ていない」というお悩みです。対処法は後ほど解説します。
※「朝鮮」籍の方の相続は、適用される法律の考え方が異なるため、個別のご相談をおすすめします。
韓国語がわからなくても大丈夫|帰化・相続で使う韓国書類の取り方

帰化した親の相続でも、韓国籍の親の相続でも、韓国の書類は韓国まで行かなくても日本国内で取り寄せることができます。おおまかな流れは次の4ステップです。
STEP1 韓国の本籍地(登録基準地)を調べる
韓国の除籍謄本を請求するには、韓国の本籍地が必要です。わからない場合は、親族が保管している古い韓国の戸籍や家族関係証明書、外国人登録原票などが手がかりになります。
STEP2 駐日大韓民国大使館・総領事館で請求する
除籍謄本や家族関係登録簿の証明書は、日本国内の駐日大韓民国大使館・総領事館で請求できます。請求できる方は本人や配偶者、直系の家族などに限られますが、委任状があれば代理人による請求も可能です。
STEP3 日本語に翻訳する
韓国語の書類を日本の銀行や法務局に提出するときは、日本語の翻訳文(翻訳者の氏名を記載したもの)を添付します。家族関係登録簿の証明書や電算化後の除籍謄本はハングルで書かれており、それより古い手書きの除籍謄本は崩し字の漢字で書かれていることも多いため、読み解くのに時間がかかります。古い除籍謄本は判読や続柄の確認に時間がかかるため、取得から翻訳まで専門家へ依頼する方法もあります。
STEP4 日本の書類と組み合わせて相続人を確定する
韓国の書類、日本の戸籍、外国人登録原票などを組み合わせて、相続人が誰かを確定します。ここで初めて、遺産分割協議や名義変更の手続きに進むことができます。
帰化・韓国籍の相続でよくあるつまずき|名前の違い・届出漏れ

本名・通名・帰化後の氏名が書類ごとに違う
韓国籍の方は、韓国の書類では本名、日本の生活では通名(日本名)、帰化後は日本の氏名と、書類によって名前が違うことがよくあります。不動産の登記簿や預金口座の名義が通名になっている場合もあります。
帰化や韓国籍が関わる相続では、外国人登録原票(通名の記載があります)や帰化したときの戸籍(除籍)謄本などを組み合わせて、すべて同じ人物であることを証明する必要があります。どの書類で証明するかは提出先によって異なるため、事前の確認が大切です。
出生や婚姻が韓国側に届け出られていない
この場合は、日本の市区町村で出生届や婚姻届の受理証明書・記載事項証明書などを取得し、韓国側で必要な家族関係登録の手続きを進めます。ただし、届出がされていない時期や内容、韓国側の登録状況によって必要な手続きは異なります。**領事館への出生・婚姻等の届出だけで済む場合もあれば、家族関係登録簿の訂正や登録創設など、別の手続きが必要になる場合もあります。
韓国側への届出から反映までには時間がかかることがあります。また、日本の届書は市区町村での保存期間があるため、古いものは取得できない場合もあります。届出漏れに気づいたら、早めに確認しましょう。
帰化・韓国籍の相続で、相続登記・預貯金の手続きの注意点
「法定相続情報証明制度」は利用できない
日本人の相続で便利な法定相続情報一覧図は、日本の戸籍謄本をもとに作る制度です。法務局は、被相続人や相続人が日本国籍を有しないなど、戸籍謄本を提出できない場合は利用できないとしています。亡くなった方が帰化していた場合は、帰化前の期間を日本の戸籍で証明できません。また、亡くなった方が韓国籍の場合も同様です。そのため、この記事で取り上げたケースでは、いずれもこの制度を利用できません。金融機関や法務局には、それぞれ書類一式と翻訳文を提出して手続きを進めます。
相続登記は3年以内に
相続登記は2024年4月から義務化されています。亡くなった方の国籍にかかわらず、相続人は、日本国内の自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。また、遺産分割によって不動産を取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に、その内容に応じた登記をする必要があります。帰化した方や韓国籍の方の相続では、韓国の書類の収集や翻訳に時間がかかるため、早めの着手をおすすめします。
相続放棄は3か月以内
亡くなった方が韓国籍でも、相続開始時の住所が日本国内にあった場合は、日本の家庭裁判所に国際裁判管轄があります。また、韓国法が相続の準拠法となる場合も、韓国民法では相続放棄の期間を原則として相続開始を知った日から3か月以内としています。
残されたご家族が韓国籍の場合は、次の相続に備えて
お父さまの相続を終えても、お母さまがまだ韓国籍のまま、というご家族も多いと思います。その場合、次の相続でも原則として韓国の民法が適用され、韓国の書類も必要になります。今のうちにできる備えは、次の2つです。
1. 韓国の家族関係登録簿を整えておく
お母さまがお元気なうちに、ご本人の韓国の家族関係登録簿の証明書を取り寄せ、子の出生や婚姻などの届出漏れがないかを確認しておきます。漏れがあれば今のうちに韓国側へ届け出て反映させておくことで、次の相続での書類集めがずっと楽になります。
2. 公正証書遺言を作っておく
韓国籍の方でも、日本を常居所として生活している場合には、一定の要件を満たす遺言で相続の準拠法として日本法を明示的に指定する方法があります。指定後も死亡時まで日本に常居所を維持していれば、日本法に従って相続を進めることができます。
さらに、財産の分け方と遺言執行者まで決めておけば、遺言の内容どおりに承継する財産については、原則として相続人全員による遺産分割協議が不要になります。相続人全員の署名や印鑑証明書をそろえずに進められる手続きも増えるため、相続人に韓国在住の方や疎遠な方がいる場合には特に有効です。
ただし、遺言があっても、お母さまが亡くなったことや、財産を受け取る方との親子関係を証明するために、韓国の書類は引き続き必要です。遺言は書類集めをなくすものではなく、集める範囲や相続人どうしの手続きを減らすものと考えてください(提出先によっては、相続人全員を確認する書類を求められることもあります)。
帰化・韓国籍が関わる相続は司法書士へご相談ください
帰化した方や韓国籍の方が関わる相続は、韓国の書類の取得と翻訳、名前の違いの証明、日本での相続登記など、日本人同士の相続にはない手間がかかります。「韓国語が読めない」「帰化した親の相続で何をどこで取ればよいかわからない」という方も、ご安心ください。
司法書士法人輝誠法務事務所では、適用される法律の確認から、韓国の書類の取得サポート・翻訳、遺産分割協議書の作成、相続登記・預貯金の解約まで一貫してサポートしています。
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※本記事は掲載時点の法令・実務運用等を前提として作成しています。法令改正や判例・運用変更等により、最新の取扱いと異なる場合があります。


