相続人と連絡が取れない場合の相続手続き|住所調査・遺産分割の進め方を司法書士が解説

「相続人と連絡が取れない」「兄弟の住所が分からない」「遺産分割の連絡をしても返事がない」――。
相続手続きを進めようとしたとき、こうした問題が初めて表面化することがあります。特に、何代も相続登記をしていない不動産や、数次相続が発生しているケースでは、これまで会ったことのない親族が相続人になっていることも珍しくありません。数次相続の場合の進め方は、別のコラムで詳しく解説しています。
「数次相続の相続登記とは?何代も前の不動産名義を変更する方法を司法書士が解説」
遺産分割協議は、相続人全員で行わなければ成立しません。連絡が取れないからといって、その相続人を外して残りの相続人だけで遺産を分けることはできません。
ただし、「連絡が取れない相続人」と「行方不明の相続人」は同じではありません。
- 住所は分かっているが、返事がない → 遺産分割調停を検討する
- 住民票や戸籍の附票を調べ、最後の住所へ郵便を送っても所在が分からない → 不在者財産管理人の選任を検討する
どちらに当たるかは、戸籍で相続人を確定し、住民票や戸籍の附票で住所を調べ、実際に連絡を試みてはじめて判断できます。
この記事では、相続人と連絡が取れないときの住所調査から、状況に応じた遺産分割の進め方、相続登記の期限への対応までを、司法書士が実務に沿って解説します。

目次
- 相続人と連絡が取れなくても、その人を外して遺産分割はできない
- 相続人と連絡が取れないときは、まず状況を確認する
- 住民票や戸籍の附票から現在の住所を調べる
- 住所が分かったら、まず書面で連絡する
- 住所は分かっているのに返事がない場合
- 現在の住所そのものが確認できない場合
- 相続登記の期限が迫っている場合はどうする?
- 相続人と連絡が取れない場合に司法書士へ依頼できること
- まとめ
相続人と連絡が取れなくても、その人を外して遺産分割はできない
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。疎遠だから、住所が分からないから、手紙を送っても返事がないからといって、その人を除外して協議を成立させることはできません。
たとえば、父が亡くなり、相続人が長男・二男・長女の3人だったとします。長男と長女だけで「二男とは何十年も連絡を取っていないから、二人で分けよう」と合意して遺産分割協議書を作成しても、有効な遺産分割協議にはなりません。二男の署名や押印を他の相続人が代わりに行うことも、もちろんできません。
遺産分割協議の進め方や、協議がまとまった後に作成する遺産分割協議書については、弊所のコラムで詳しく解説しています。
一方で、相続人全員による遺産分割協議ができないからといって、すべての相続手続きが止まるわけではありません。相続人申告登記や法定相続分による相続登記など、遺産分割が成立していなくても進められる手続きがあります(後述「相続登記の期限が迫っている場合はどうする?」参照)。
相続登記そのものの流れや必要書類については、次のコラムをご参照ください。
「相続登記の手続きの流れと必要書類|司法書士がやさしく解説」
相続人と連絡が取れないときは、まず状況を確認する
一口に「相続人と連絡が取れない」といっても、実際の状況はさまざまです。大きく分けると、次のようなケースが考えられます。
- 電話番号や住所など、現在の連絡先を手元で把握していない
- 現在の住所は分かっているが、手紙や電話に返事がない
- 住民票上の住所へ郵便を送っても、本人が住んでいない
- 住民票や戸籍の附票を調べても、現在の住所を確認できない
- 長期間にわたり、所在も生死も分からない
これらの状況は、次の3つに整理できます。どれに当たるかで、法律上の扱いと進む手続きが変わります。
| 状況 | 法律上の扱い | 進む手続き |
|---|---|---|
| 住所や電話番号が分からない | この段階では不在者かどうかは判断できない | 戸籍の附票や住民票で現在の住所を調べ、書面で連絡する |
| 住所は分かっているが、連絡に応じない | 「返事をしない相続人」であり、不在者ではない | 訪問などで事情を確認して話し合う。まとまらなければ遺産分割調停・審判 |
| 公的な住所記録を調べ、必要に応じて現地確認などを行っても所在が分からない | 不在者に当たる可能性がある | 不在者財産管理人の選任申立て |
なお、返事がない理由が認知症などによる判断能力の低下にある場合は、単に連絡に応じないケースとは別の対応が必要です。
「何年も連絡を取っていないから行方不明だろう」と判断するのではなく、まず公的な住所記録をたどることが出発点になります。
住民票や戸籍の附票から現在の住所を調べる
相続人の住所が分からない場合は、まず戸籍から相続人を確定し、そのうえで住民票や戸籍の附票から現在の住所を確認します。
戸籍の附票には、その戸籍に在籍している間の住所の履歴が記録されています。本籍地が変わっている場合は戸籍を順にたどり、現在の戸籍の附票まで確認していきます。
司法書士が相続手続きの依頼を受けた場合は、その手続きに必要な範囲で、職務上請求により住民票や戸籍の附票を取得できます。

住民票が「職権消除」になっていることもある
住所を調べていくと、住民票が職権消除されているケースに行き当たることがあります。
職権消除とは、登録されている住所に実際には住んでおらず、市区町村が居住実態を確認できない場合などに、住民票を職権で消除するものです。
職権消除され、戸籍の附票にもその後の住所が記録されていなければ、公的な記録から現在の所在を追うことはできません。この場合は、必要に応じて最後の住所地の状況確認や親族への問い合わせなども行い、不在者財産管理人の選任申立てを検討します。
依頼者から「住所が分からない」と聞いただけで不在者と判断するのではなく、まず住民票や戸籍の附票まで確認するのが、実務の第一段階です。
住所が分かったら、まず書面で連絡する
住民票や戸籍の附票から現在の住所が判明したら、その住所へ書面を送ります。いきなり遺産分割協議書を送って「ここに実印を押してください」と求めるのではなく、まずは次のような内容を伝えるのがよいでしょう。
- 誰が亡くなったのか
- 相続手続きを進めていること
- 相手自身も相続人であること
- 遺産分割について話をしたいこと
- 連絡先と、できれば返答の目安となる期限
長年疎遠だった親族であれば、被相続人が亡くなったこと自体を知らないケースもあります。突然の手紙に警戒されないよう、事情が分かる丁寧な文面を心がけましょう。
司法書士が相続人へ連絡する場合でも、一方の相続人の代理人として遺産の分け方を交渉することはできません。
送り方と「返送理由」に注意する
書面は、簡易書留や特定記録郵便、一般書留に配達証明を付ける方法など、差出しや配達の状況を確認できる方法で送り、返送された封筒も保管しておきます。
ただし、返送されたときは、その理由によって意味が大きく異なります。
| 返送理由 | 分かること |
|---|---|
| あて所に尋ねあたりません | その住所に本人が住んでいない可能性を示す資料になる |
| 保管期間経過 | 不在のため受け取られなかっただけで、住んでいないとは言えない |
| 受取拒絶 | その住所で郵便物の受取りを拒絶されたことを示す。ただし、これだけで本人の所在が確定するわけではない |

「保管期間経過」で返送された場合は、単に不在が続いて受け取れなかった可能性もあるため、それだけで本人がその住所に住んでいないとは判断できません。
つまり、「住所を調べた → 郵便を送った → この理由で戻ってきた」という経過を記録として残しておくわけです。この経過は、その後に調停や不在者財産管理人の手続きへ進む際にも重要な資料になります。
住所は分かっているのに返事がない場合
郵便は届いている。住所も間違っていない。それでも返事がない。この場合、その相続人は「行方不明」ではありません。
したがって、返事をしない相続人を不在者として扱い、不在者財産管理人を選任して代わりに遺産分割を進めることはできません。
なお、返事がない原因が認知症などによる判断能力の低下にある場合は、単に連絡を拒んでいるケースとは扱いが異なります。本人が有効に遺産分割協議を行える状態かどうかを確認し、必要に応じて別の手続きをとります。
話し合いに応じない場合は遺産分割調停へ
まずは返答期限を示して、もう一度書面で連絡します。それでも話し合いができなければ、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てることになります。申立先は、原則として相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所です。
遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員を介して、相続人間で遺産の分け方を話し合います。直接の話し合いには応じなかった相続人も、裁判所から呼出しが届くと出席してくることは少なくありません。
相手が調停にも出てこない場合
相手方が調停を欠席しても、欠席したことだけを理由に申立人の希望どおりの分割が成立するわけではありません。ただし、手続きが止まってしまうわけでもありません。
- 調停に代わる審判:相手方が欠席を続けていても、裁判所が相当と認めれば、分割の内容を審判で示すことがあります。2週間以内に異議が出なければ確定し、異議が出れば効力を失います。
- 遺産分割審判:調停が不成立となった場合は、自動的に審判手続きへ移行し、裁判官が分割の方法を定めます。

つまり、連絡に応じない相続人がいる場合は、不在者財産管理人ではなく、家庭裁判所の調停・審判の中で解決を図ることになります。調停や審判で代理人として相手方とやり取りできるのは弁護士です。
現在の住所そのものが確認できない場合
住民票や戸籍の附票を調べ、最後に確認できた住所へ郵便を送っても本人の所在が分からない場合は、単に「返事をしない相続人」とは別の問題になります。
当事務所では、住民票が職権消除されている場合や、確認した住所へ送った郵便が「あて所に尋ねあたりません」などの理由で返送され、ほかに所在を確認できる情報もない場合には、不在者財産管理人の選任申立てを検討します。
不在者財産管理人を利用する場合には、家庭裁判所への申立てや所在調査、不在者の相続分を確保した遺産分割など、通常の相続手続きとは異なる論点が出てきます。
不在者財産管理人の選任申立てや、その後の遺産分割については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「相続人が行方不明の場合の手続き|不在者財産管理人の申立てと遺産分割を司法書士が解説」
相続登記の期限が迫っている場合はどうする?
相続人の一人と連絡が取れず、遺産分割ができないからといって、相続登記の申請義務がなくなるわけではありません。
2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得した人は、自己のために相続が開始したことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記を申請しなければなりません。
2024年4月1日より前に発生した相続も対象です。同日時点ですでに相続による不動産の取得を知っていた場合、経過措置による期限は2027年3月31日です。正当な理由なく義務を怠ると、10万円以下の過料の対象となります。
相続登記義務化の詳しい内容については、「相続登記の義務化とは?期限・過料・放置リスクを司法書士が解説」で解説しています。
「相続登記の義務化とは?期限・過料・放置リスクを司法書士が解説」
連絡が取れず、期限までに遺産分割をまとめられない場合の対応は、主に次の2つです。どちらも、連絡の取れない相続人の協力なしに進められます。

相続人申告登記
相続人申告登記は、法務局に対して「自分が登記名義人の相続人である」ことを申し出る制度です。相続人の一人から単独で申し出ることができ、申出をした人は相続登記の申請義務を履行したものと扱われます。
ただし、不動産の名義がその相続人へ移るわけではなく、この登記だけで売却や担保設定はできません。また、後に遺産分割が成立して不動産を取得した人は、分割の日から3年以内に、その内容に沿った相続登記を申請する必要があります。
法定相続分による相続登記
法定相続分どおりの共有名義にする相続登記は、相続人の一人から、相続人全員分をまとめて申請できます。連絡の取れない相続人の同意や印鑑証明書は不要です。
一方で、不動産は連絡の取れない相続人も含めた共有状態になり、売却には全員の協力が必要なままです。また、登記識別情報(いわゆる権利証)は、申請人となった相続人にのみ通知され、申請人とならなかった相続人には通知されません。後に遺産分割が成立すれば、分割の結果に合わせて登記を変更する手続きも必要です。
どちらを選ぶべきかは、不動産の数や将来の処分の予定によって変わります。いずれにしても、遺産分割が止まっていても登記の期限は別に進むため、「遺産分割の問題」と「登記義務への対応」は分けて進めます。
相続人と連絡が取れない場合に司法書士へ依頼できること
相続人と連絡が取れない場合でも、次のような手続きは司法書士へ依頼できます。
- 戸籍を収集して相続人を確定する
- 住民票や戸籍の附票から現在の住所を調べる
- 相続関係を整理し、相続不動産を調査する
- 相続人への案内文の作成をサポートする
- 遺産分割協議書を作成する
- 相続人申告登記や相続登記を行う
- 遺産分割調停、成年後見開始、不在者財産管理人選任の申立書など、家庭裁判所に提出する書類を作成する
ただし、司法書士が一人の相続人の代理人となり、ほかの相続人と遺産の分け方を交渉することはできません。相手が遺産分割に応じず、相続人間で意見が対立している場合は、弁護士への依頼をご検討ください。
一方、次のような段階であれば、司法書士が戸籍と住所を調べ、現在の相続関係を確定するところからお手伝いできます。
- そもそも相続人が誰なのか分からない
- 相続人の住所が分からない
- 何代も前の名義の不動産で、相続人が多数になっている
まとめ
相続人と連絡が取れないからといって、その人を外して遺産分割を進めることはできません。
- 戸籍で相続人を確定し、住民票や戸籍の附票から現在の住所を調べる
- 判明した住所へ書面で連絡し、返送された場合はその理由を確認する
- 「住所は分かるが返事がない」なら遺産分割調停へ、「所在そのものが分からない」なら不在者財産管理人の選任へ進む
- 遺産分割とは別に、相続登記の期限へは相続人申告登記などで対応する
司法書士法人輝誠法務事務所では、相続人の調査、戸籍・住民票・戸籍の附票の収集、相続関係の確認、相続登記、家庭裁判所への申立書類の作成まで、まとめてお任せいただけます。
「連絡を取っていない親族が相続人になっている」「住所すら分からない」という段階でも構いません。まず現在の相続人と住所を確認するところから始めます。
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