遺言作成の基礎知識|種類・費用・保管制度をやさしく解説

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「遺言書は資産家が用意するもの」というイメージをお持ちの方は少なくありません。お盆や帰省など、ご家族が集まる機会に、将来の相続や実家のことが話題になることもあるのではないでしょうか。
しかし実際には、預貯金や自宅などの身近な財産だけでも、遺言書がないことで相続手続きが複雑になったり、ご家族の間で意見が食い違ったりすることがあります。
当事務所でも、このようなご相談を数多くお受けしています。
この記事では、遺言作成をはじめて検討する方に向けて、遺言書の役割・種類・作成のポイントを、幅広い一般の方向けにわかりやすく解説します。

目次

  1. 遺言作成はなぜ必要なのか
  2. こんな方は特に遺言作成がおすすめ
  3. 遺言書の主な種類
  4. 自筆証書遺言を法務局で預かる「保管制度」
  5. 確実性を重視するなら公正証書遺言
  6. 遺言作成で押さえたいポイント
  7. 自筆証書遺言が無効にならないための注意点
  8. 遺言書は何度でも書き直せる
  9. 「遺留分」への配慮も忘れずに
  10. エンディングノートとの違い
  11. 遺言作成を専門家に相談するメリット
  12. まとめ

遺言作成はなぜ必要なのか

遺言書がない場合、遺産の分け方は原則として相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決めます。民法には法定相続分が定められていますが、相続人全員が合意すれば、それと異なる割合や分け方にすることもできます。話し合いがまとまらなければ、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更が進まず、手続きが長期化することもあります。
遺言書を残しておけば、「どの財産を誰に渡すか」をご自身の意思で決められ、残されたご家族の話し合いや手続きの負担を減らし、争いを防ぐ一助になります。
相続人となっていないお孫さん、お世話になった方や内縁のパートナーなど、法定相続人以外へ財産を渡したい場合にも遺言書が力を発揮します。

こんな方は特に遺言作成がおすすめ

次のようなご事情がある方は、遺言書を用意しておくことで将来のトラブルを防ぎやすくなります。財産の額にかかわらず、当てはまるものがあれば早めの準備を検討しましょう。

  • お子さまがいない夫婦で、配偶者に財産を多く残したい方(子がいない場合、兄弟姉妹などが相続人となることがあります)
  • 相続人同士の関係が疎遠、または意見が対立しやすい方
  • 自宅などの不動産が主な財産で、分けにくい方
  • 再婚している方や、前婚のお子さまがいる方、または法定相続人以外に財産を渡したい方
  • 事業や賃貸物件を経営しており、特定の人に引き継がせたい方

遺言書の主な種類

遺言作成で選ぶ自筆証書遺言と公正証書遺言の作成方法・費用・特徴の比較表

一般に利用されるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類です。自筆証書遺言は、遺言者本人が全文・日付・氏名を手書きし、押印して作成します。手軽で費用がかからない一方、形式の不備で無効になったり、紛失・改ざんのおそれがある点に注意が必要です。
なお2019年の法改正により、財産の一覧である「財産目録」については、パソコンで作成したり通帳のコピーを添付したりできるようになり、負担が軽くなりました。
ただし、自書によらない財産目録を添付する場合は、現在の制度では、その各ページに遺言者の署名・押印が必要です。

2026年に遺言制度の改正法が成立しました

2026年(令和8年)6月には、遺言制度を見直す改正法が成立・公布されました。

改正法では、自筆証書遺言などの押印を任意とする見直しのほか、パソコン等で作成した遺言を法務局で保管する新しい「保管証書遺言」の制度が創設されます。

ただし、これらの改正は2026年8月現在、まだ施行されていません。押印の任意化等は公布から1年以内、新しい保管証書遺言は公布から3年以内の政令で定める日に施行される予定です。
現在、自筆証書遺言を作成する場合は、現行法の方式に従う必要があります。

自筆証書遺言を法務局で預かる「保管制度」

自筆証書遺言の弱点である「紛失・改ざん・発見されない」といったリスクを補うのが、法務局の自筆証書遺言書保管制度です。所定の手数料(1件3,900円)で法務局に遺言書を預けられ、形式面のチェックも受けられます。さらに、この制度を利用した遺言書は、相続開始後に家庭裁判所の「検認」手続きが不要になるという大きなメリットがあります。制度の詳細や手数料は、法務省の公式ページで確認できます。

ただし、法務局が確認するのは、自筆証書遺言としての形式面です。財産の分け方が適切か、遺留分に問題がないか、記載した内容で希望どおりの相続手続きができるかまで確認してもらえる制度ではありません。

参考:法務省「自筆証書遺言書保管制度について」

確実性を重視するなら公正証書遺言

確実性を重視して遺言を残したい方には、公証人が作成する公正証書遺言が向いています。
公証人が関与して作成するため形式の不備で無効になる心配が少なく、原本は公証人側で保存されるため、遺言者が原本を紛失したり、相続人によって破棄・改ざんされたりするリスクを抑えられます。
作成には証人2名の立ち会いが必要で、手数料は財産の価額に応じて決まります。手続きや費用の目安は、日本公証人連合会のサイトで確認できます。

参考:日本公証人連合会「公証人手数料」

遺言作成で押さえたいポイント

遺言作成の進め方4ステップ(財産の整理・分け方・方式選び・保管)を示した図

  • 誰に何を渡すのかを具体的に書き、財産を特定できるようにする
  • 不動産は登記事項証明書のとおりに、預貯金は金融機関名・支店名など、対象となる財産を特定できるように記載する
  • 遺言書に個別に記載していない財産を誰に承継させるかも定めておく
  • 遺言の内容を実現する「遺言執行者」を指定しておくと手続きがスムーズになる
  • 財産の分け方を決めた理由やご家族への思いを「付言事項」として記しておくことで、遺言者の意図を伝えることができる

自筆証書遺言が無効にならないための注意点

自筆証書遺言が無効にならないための4つの確認ポイント(自書・日付・押印・訂正方法)をチェックリスト形式で表示。

手軽に作れる自筆証書遺言ですが、決められた形式を満たしていないと、せっかく書いても無効になってしまうおそれがあります。特に次の点はよく確認しましょう。
まず、本文はパソコンではなく必ず全文を自分の手で書く必要があります(財産目録を除く)。次に、作成した日付は「令和7年8月吉日」のようなあいまいな書き方ではなく、年月日まで正確に記載します。
氏名を自書し、押印することも必要です。なお、2026年6月に公布された改正法では押印を任意とする見直しが予定されていますが、施行前の現在は従来どおり押印が必要です。
書き間違えたときの訂正にも法律で定められた方法があり、自己流で修正すると効力が認められないことがあります。せっかくの遺言が無駄にならないよう、形式面は慎重に整えることが大切です。

遺言書は何度でも書き直せる

「一度書いたら変えられない」と身構える必要はありません。遺言書は、本人の意思でいつでも撤回・書き直しができます。
複数の遺言書がある場合、後に作成した遺言と前の遺言の内容が抵触する部分については、前の遺言を撤回したものとして扱われます。
家族構成の変化、財産の増減、引っ越しなど、生活の節目にあわせて内容を見直すことで、常に「今の気持ち」に沿った遺言を残せます。
作成後は数年ごとに読み返し、必要に応じて更新する習慣をつけておくと安心です。

「遺留分」への配慮も忘れずに

遺言書では原則としてご自身の意思で財産の分け方を決められますが、相続人となる配偶者、子、父母・祖父母などの直系尊属には、「遺留分」という最低限保障された取り分があります。
一方、兄弟姉妹には遺留分はありません。
特定の人に財産を集中させる内容にすると、他の相続人から遺留分を請求され、かえって争いのもとになることもあります。
遺言書を作成する際は、遺留分にも配慮したうえで、遺留分侵害額請求を受けた場合の支払原資まで考えて遺言内容を決めておくことも重要です。
判断が難しい場合は専門家に相談しましょう。

エンディングノートとの違い

遺言書と混同されやすいものに「エンディングノート」があります。
エンディングノートは、家族への感謝の言葉や葬儀の希望、連絡先や資産の情報などを自由に書き留めておくもので、気軽に始められる点が魅力です。
ただし、通常のエンディングノートには、遺言書のように財産の承継先を法的に指定する効力はありません。財産を「誰にどう渡すか」を確実に実現したい場合は、法律上の要件を満たした遺言書が必要です。
両者は役割が異なるため、エンディングノートで思いを整理しつつ、財産の承継については遺言書で正式に定める、という併用がおすすめです。

遺言作成を専門家に相談するメリット

遺言書はご自身だけでも作成できますが、内容が複雑な場合や確実性を重視したい場合は、司法書士などの専門家に相談することで、相続人や財産を確認したうえで、遺留分、相続開始後の登記・預貯金手続き、遺言執行まで見据えて内容を検討していくことができます。
専門家に依頼すると、形式の不備で無効になるリスクを避けられるほか、財産の調べ方や分け方、遺言執行者の選び方まで具体的にアドバイスを受けられます。
公正証書遺言を選択する場合は、遺言案の作成、公証役場との事前調整、必要書類の準備、証人の手配までお願いできます。
特に、不動産の名義変更(相続登記)まで見据えた遺言にしておくと、相続開始後の手続きがスムーズです。
「何から手をつければよいかわからない」という段階でも、まずは相談してみることで、ご自身に合った進め方が見えてきます。

まとめ

遺言書は、財産の額にかかわらず、「誰に、どの財産を引き継いでもらうか」をあらかじめ明確にしておくための手段です。

自筆証書遺言、公正証書遺言にはそれぞれ特徴があり、ご家族の構成、財産の内容、遺言を作る目的によって適した方法は変わります。
特に、不動産がある方、子どもがいない方、前婚のお子さまがいる方、相続人以外へ財産を遺したい方などは、判断能力が十分なうちに遺言内容を検討しておく意味が大きいでしょう。
手軽に始めたい方は法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言を、確実性を重視したい方は公正証書遺言を検討するとよいでしょう。
ご自身の状況に合った方法を選び、元気なうちに準備を進めることが、円満な相続への第一歩です。判断に迷うときや内容に不安があるときは、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

司法書士法人輝誠法務事務所では、遺言内容の検討から、自筆証書遺言の作成支援、公正証書遺言の公証役場との調整、必要書類の準備、証人の手配までご依頼いただけます。遺言作成でお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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