自筆証書遺言書保管制度とは?費用と手続きを司法書士が解説

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自筆証書遺言書保管制度は、自分で書いた遺言書を法務局が安全に預かってくれる公的な制度です。2020年7月にスタートした比較的新しい仕組みで、「遺言書を紛失したくない」「確実に残しておきたい」という方の利用が広がっています。この記事では、自筆証書遺言書保管制度の内容・メリット・手数料・手続きの流れ・注意点まで、はじめての方にもわかりやすく解説します。

目次

  1. 自筆証書遺言書保管制度とは?
  2. 自筆証書遺言書保管制度を使う5つのメリット
  3. 自筆証書遺言書保管制度の手数料はいくら?(費用一覧)
  4. 自筆証書遺言書保管制度の申請手続きの流れ
  5. 自筆証書遺言書保管制度の申請に必要な書類
  6. 自筆証書遺言書保管制度で預ける遺言書の様式ルール
  7. 自筆証書遺言書保管制度の利用で注意したい点
  8. 遺言を作成する段階で司法書士等へ相談する意味
  9. 自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言の違い
  10. 自筆証書遺言書保管制度は司法書士へご相談ください

自筆証書遺言書保管制度とは?

自筆証書遺言書保管制度とは、自筆で作成した遺言書(自筆証書遺言)を、法務局(遺言書保管所)が原本を預かり、画像データとしても保管してくれる公的な制度です。

これまで自筆の遺言書は、自宅の金庫や引き出しなどで保管するのが一般的でした。しかし、それでは「紛失してしまう」「相続人に見つけてもらえない」「一部の相続人に書き換えられたり、隠されたりする」といったリスクがつきまといます。この制度を利用すれば、こうした心配を大きく減らすことができます。

制度の公式な情報は、法務省の特設ページで確認できます。あわせてご覧ください。

自筆証書遺言書保管制度を使う5つのメリット

遺言書を法務局に預ける制度の5つのメリット(検認不要・紛失防止など)を示した図

1. 家庭裁判所の「検認」が不要になる

通常、自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所で検認という手続きを受ける必要があります。検認には数週間〜1か月以上かかることもあり、相続人にとって負担になりがちです。本制度で保管された遺言書は、この検認が不要となるため、相続手続きをスムーズに進めることができます。

2. 紛失・改ざん・隠匿を防げる

原本を法務局が保管するため、自宅で保管する場合と比べて、紛失や第三者による改ざん・破棄・隠匿を防ぐことができます。自宅保管につきものの不安を解消できます。

3. 形式面のチェックを受けられる

保管申請の際、法務局の担当者が民法で定められた形式(日付・氏名・押印・全文自書など)を満たしているかを確認します。形式不備で遺言書が無効になるリスクを減らせます。

4. 全国の遺言書保管所でモニター閲覧や証明書の取得ができる

相続開始後、相続人などは、全国の遺言書保管所でモニターによる遺言書の閲覧や「遺言書情報証明書」「遺言書保管事実証明書」の交付を受けることができます。

5. 遺言書の存在を知らせる通知制度がある

遺言者が希望する場合、あらかじめ指定した方(最大3名まで)に対し、法務局が遺言者の死亡を確認した後、遺言書が保管されていることを知らせる「指定者通知」を利用できます。
また、相続開始後に相続人や受遺者、遺言執行者などの関係者の一人が遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書の交付を受けたりすると、その他の関係相続人等にも遺言書が保管されていることを知らせる「関係遺言書保管通知」が送られます。
これらの仕組みにより、法務局に遺言書を預けたまま、その存在を誰にも知られずに終わってしまうリスクを減らすことができます。

自筆証書遺言書保管制度の手数料はいくら?(費用一覧)

遺言書の保管申請にかかる手数料の一覧表(保管申請3,900円など)

自筆証書遺言書保管制度の大きな魅力のひとつが、費用の手頃さです。保管の申請にかかる手数料は1件3,900円で、その後の保管料は一切かかりません。主な手数料は以下のとおりです。

手続きの種類手数料
遺言書の保管の申請1件につき 3,900円
遺言書の閲覧の請求(モニターによる閲覧)1回につき 1,400円
遺言書の閲覧の請求(原本の閲覧)1回につき 1,700円
遺言書情報証明書の交付請求1通につき 1,400円
遺言書保管事実証明書の交付請求1通につき 800円
保管の申請の撤回・変更の届出手数料なし(無料)

なお、無料で行える「変更の届出」は、遺言者や受遺者、遺言執行者などの住所・氏名等の変更を届け出る手続きであり、遺言書に書かれた内容そのものを変更する手続きではありません。

財産の承継先など遺言内容を変更したい場合は、新しい遺言書を作成します。法務局では、従前の保管申請を撤回したうえで、新しい遺言書を改めて保管申請する方法が推奨されており、新たな保管申請には再度3,900円の手数料がかかります。
※保管申請を「撤回」して法務局から遺言書を返してもらっただけでは返却を受けた遺言が自筆証書遺言として有効なため、遺言そのものを撤回したことにはなりません。

手数料は収入印紙で納めます。最新の金額や保管所の一覧は、法務省の公式ページでご確認ください。

自筆証書遺言書保管制度の申請手続きの流れ

遺言書を法務局に預ける手続きの流れを示した4ステップの図

自筆証書遺言書保管制度の保管申請は、次の4つのステップで進みます。遺言者ご本人が法務局へ出向く必要があり、代理人による申請はできません。

STEP1 遺言書を作成する

民法の定める方式に従い、全文・日付・氏名を自書し、押印します。保管制度用の様式ルール(後述)にも合わせて作成します。

STEP2 申請する保管所を決め、予約する

申請できるのは、①遺言者の住所地/②本籍地/③所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所です。手続きは予約制(必須)のため、事前に法務局手続案内予約サービス等で予約します。
なお、すでにこの制度を利用して遺言書を保管している方が、さらに別の遺言書を保管する場合は、最初の遺言書を保管している遺言書保管所へ申請します。

STEP3 必要書類を準備し、法務局で申請する

予約日に、遺言者ご本人が遺言書・申請書・必要書類・手数料を持参して手続きします。

STEP4 保管証を受け取る

手続きが完了すると、遺言者の氏名・保管番号などが記載された「保管証」が交付されます。保管証は再発行されないため、大切に保管しましょう。

申請書の様式は、法務省ページからダウンロードできます。

自筆証書遺言書保管制度の申請に必要な書類

  • 遺言書(様式ルールに沿って作成したもの/封筒不要)
  • 保管申請書
  • 本籍と筆頭者の記載がある住民票の写しなど(作成後3か月以内/マイナンバー・住民票コードの記載がないもの)※市区町村から交付された「住民票の写し」の原本を提出します。コピーは使用できません。
  • 顔写真付きの本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
  • 手数料 3,900円分の収入印紙

自筆証書遺言書保管制度で預ける遺言書の様式ルール

本制度で保管する遺言書には、通常の自筆証書遺言に加えて、次の様式ルールがあります。これを満たしていないと保管申請ができないため、作成前に必ず確認しましょう。

  • 用紙はA4サイズ
  • 余白は上部5mm以上・下部10mm以上・左20mm以上・右5mm以上を確保する
  • 片面のみに記載する(両面書きは不可)
  • 複数ページになる場合は通し番号(ページ番号)を記載する
  • ホチキス止めはしない
  • 長期保存に耐える、消えないボールペン等で記載する

自筆証書遺言書保管制度の利用で注意したい点

便利な制度ですが、次の点には注意が必要です。

まず、法務局が確認するのは、主として自筆証書遺言としての形式面です。遺言内容そのものの審査は行われません。
そのため、遺言書に記載された内容が本当に遺言者の意思を適切に反映しているか、財産や相続人の把握に漏れがないか、遺留分への配慮がされているか、その内容で実際に相続登記や預貯金の手続きを進められるかまで確認してもらえる制度ではありません。

また、保管申請時には本人確認が行われますが、遺言作成時の判断能力や、第三者から不当な影響を受けずに作成された内容であることまで保証する制度ではありません。

さらに、前述のとおり、現在の制度では保管申請の際に遺言者ご本人が遺言書保管所へ出向く必要があり、代理人による申請はできません。
そのため、体調や身体状況などの事情で外出が難しい方には利用しにくい場合があります。そうした場合には、公証人に出張を依頼して作成することができる公正証書遺言のほうが適していることもあります。


2026年の法改正により、今後制度が変わる予定です

2026年6月に遺言制度を見直す改正法が成立・公布されました。
改正法では、パソコン等で作成した遺言を法務局に保管する新しい「保管証書遺言」が創設されるほか、現在の自筆証書遺言書保管制度についても、オンラインによる保管申請やWeb会議を利用した手続きができるようになる予定です。
ただし、2026年8月現在、これらの改正はまだ施行されていません。現在の自筆証書遺言書保管制度では、これまでどおり遺言者本人が遺言書保管所へ出向いて保管申請をする必要があります。

遺言を作成する段階で司法書士等へ相談する意味

自筆証書遺言書保管制度は、作成した遺言書を安全に保管するための制度です。一方で、誰にどの財産を承継させるか、その内容をどのような文言で遺言書へ落とし込むかは、遺言者自身で検討する必要があります。

遺言書は、単に希望する財産の分け方を書けばよいというものではありません。内容や書き方によっては、相続開始後に不動産の相続登記や預貯金の解約・払戻しなどを進める際、追加の書類や手続きが必要になったり、遺言書だけでは希望した手続きを進められなかったりすることがあります。

たとえば、不動産や預貯金の特定が不十分な場合、遺言書に記載していない財産の承継先を定めていない場合、遺言執行者の指定がない場合などには、遺言者が想定していたより相続手続きが複雑になることがあります。また、財産を渡す相手や遺言の内容によっては、適切な文言や手続きの方法について慎重な検討が必要です。

司法書士等の専門家へ相談することで、相続人や財産を確認したうえで、遺留分への配慮、残余財産の承継先、遺言執行者の指定などを検討し、実際に相続が発生した後の不動産登記や預貯金手続きまで見据えて遺言内容を組み立てることができます。

特に、不動産がある場合、相続人以外へ財産を遺したい場合、家族関係が複雑な場合、特定の方へ多くの財産を承継させたい場合などは、法務局へ保管申請をする前の「遺言内容を考える段階」で専門家へ相談することに意味があります。

自筆証書遺言書保管制度と公正証書遺言の違い

比較項目自筆証書遺言+保管制度公正証書遺言
作成する人遺言者本人が自書公証人が作成
費用保管申請 3,900円(作成費用は原則不要)財産額に応じた公証人手数料
内容のチェック形式面のみ(内容は本人責任)公証人が内容面も関与
証人不要2名必要
検認不要不要

公証人は「内容」もチェックしてくれる

両者の最も大きな違いは、内容面に専門家が関与するかどうかです。自筆証書遺言+保管制度で法務局が確認するのは形式面だけですが、公正証書遺言では公証人が内容にも踏み込んで関与します。

ただし、公証人がチェックするのは「その内容が法律上有効に成立するか」「文言として明確か」という部分が中心です。遺言者が伝えた財産情報や家族関係そのものの正確さまで独自に調査してくれるわけではありません。また、遺留分(相続人が最低限受け取れる取り分)を侵害する内容でも、公証人は助言はしますが、最終的には遺言者の意思を尊重して作成します。そのため「公証人が作れば絶対にもめない」とまでは言い切れず、内容面の設計は事前の検討が大切です。

整理すると、内容チェックの観点では「自筆+保管制度=形式のみ」「公正証書=形式+内容の適法性・明確性まで公証人が関与」というイメージです。どちらが適しているかは、ご家族の状況・財産の内容・費用の考え方によって変わります。迷ったときは専門家に相談するのが安心です。

自筆証書遺言書保管制度は司法書士へご相談ください

自筆証書遺言書保管制度は、3,900円という手頃な費用で、大切な遺言書を安全に残せる心強い制度です。検認が不要になり、紛失・改ざんの心配もなく、ご家族の相続手続きの負担を大きく減らせます。

一方で、法務局は内容面までチェックしてくれないため、「有効で、実現できて、争いを生まない遺言書」に仕上げるには、作成段階での専門的なサポートが重要です。

司法書士法人輝誠法務事務所では、自筆証書遺言の内容検討・作成から、保管制度を利用するための書類や手続きの準備、その後の相続手続きまで一貫してサポートしています。
「何から始めればいいかわからない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
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