頼れる親族がいない一人暮らしの方へ|元気なうちに準備しておきたいこと

一人暮らしで、頼れる親族がいない方の中には、今は元気に過ごせていても、「この先、自分に何かあったらどうしよう」と不安になる方も少なくありません。
「もし自分が倒れたら、誰が手続きをしてくれるのか」
「認知症になったら、お金の管理はどうなるのか」
「亡くなった後の葬儀や納骨、役所の手続きは誰に頼めばよいのか」
「遠方に甥や姪はいるけれど、日常的な手続きまで頼んでよいのか分からない」
このようなお悩みは、決して特別なものではありません。
お子様がいない方、配偶者に先立たれた方、近くに頼れる親族がいない方からは、将来の生活や亡くなった後の手続きについて、同じような不安をお聞きすることがよくあります。
この記事では、一人暮らしで身近に頼れる親族がいない方が、将来の生活や亡くなった後の手続きに備えるために、元気なうちに検討しておきたい手続きをご紹介します。
頼れる親族がいない方が感じやすい不安
一人暮らしの方の中には、親族がまったくいないわけではない、という方も多くいらっしゃいます。
たとえば、遠方に甥や姪がいる。
兄弟姉妹はいるけれど高齢である。
親族はいるものの、普段からほとんど付き合いがない。
頼めば何かしてくれるかもしれないけれど、迷惑をかけたくない。
このような場合、「身寄りがない」とまではいえなくても、将来の手続きに不安を感じるのは自然なことです。
実際に、入院や施設入所の手続き、医療費や施設費の支払い、預貯金の管理、亡くなった後の葬儀・納骨・住まいの片付けなどを、遠方の親族にすべて任せるのは、現実には簡単ではありません。
大切なのは、親族がいるかどうかだけではありません。
実際に、身近で手続きを頼める人がいるかどうかです。
元気なうちに、誰に何を任せるのかを整理しておくことで、ご本人にとっても、ご家族や親族にとっても安心につながります。
頼れる親族がいない方が元気なうちに準備しておきたいこと
一人暮らしで将来に備える場合、まず考えておきたいのは、制度名ではありません。
大切なのは、将来どのような場面で、誰に、何を任せたいのかを整理することです。
たとえば、次のようなことを考えておくと安心です。
- 定期的に生活状況を確認してくれる人を決めておく
- 入院や施設入所が必要になったときの手続きを考えておく
- 預貯金や支払いの管理を任せる方法を検討しておく
- 認知症などで判断能力が低下した後に備えておく
- 亡くなった後の葬儀、納骨、役所手続、住まいの片付けを誰に任せるか決めておく
- 財産を誰に承継させるかを決めておく
これらは、ひとつの手続きですべて解決できるものではありません。
見守り契約、財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約、遺言などを、ご本人の状況に合わせて組み合わせながら、将来に備える形を整えていきます。
定期的に状況を確認してほしい場合|見守り契約
一人暮らしの場合、日々のちょっとした不安や体調の変化を、すぐに誰かへ相談しにくいものです。
「最近、少し体調が不安」
「病院や施設のことを誰かに相談したい」
「何かあったときに、誰かが気づいてくれる状態にしておきたい」
このように感じる方もいらっしゃいます。
そのような不安に備える契約が、見守り契約です。
見守り契約では、定期的な電話連絡や面談を通じて、ご本人の生活状況や健康状態を確認していきます。
身近に頼れるご親族がいない場合でも、専門家と見守り契約を結んでおくことで、定期的に相談できる先を作っておくことができます。
定期的に話を聞いてくれる人がいること。
困ったときに相談できる先があること。
必要なときに、任意後見や財産管理などの手続きにつなげてもらえること。
こうした安心感を持ちながら日々の生活を続けていける点が、見守り契約の大きな意味です。
特に、ご家族が遠方にお住まいの方や、身近に頼れる親族がいない方にとっては、早い段階から見守り契約を検討しておくと安心です。
元気なうちからお金や手続きを手伝ってほしい場合|財産管理契約
判断能力はしっかりしていても、年齢や体調、入院、施設入所などにより、銀行や役所の手続きが大きな負担になってくる方もいらっしゃいます。
そのようなときに検討するのが、財産管理契約です。
財産管理契約では、ご本人の判断能力があるうちに、預貯金の管理、各種支払い、入院や施設入所に関する手続きなどを、信頼できる人や専門家に任せる形を整えます。
身近に頼れるご親族がいない方や、ご家族にお金の管理を頼みにくい方にとって、専門家へ財産管理を依頼できることは大きな安心につながります。
たとえば、次のような内容です。
- 預貯金の管理
- 医療費、介護費、施設費などの支払い
- 公共料金や各種費用の支払い
- 役所や金融機関での手続き
- 入院、施設入所に関する手続き
- 必要書類の確認や整理
注意したいのは、財産管理契約は、あくまでご本人に判断能力がある段階で利用する契約だという点です。
認知症などにより判断能力が低下した後は、財産管理契約だけでは対応しきれない場面が出てきます。
そのため、見守り契約で定期的に状況を確認し、必要に応じて財産管理契約による支援を始め、判断能力が低下した後は任意後見契約へ移行する形で備えることが多いです。
認知症などで判断能力が低下した後に備えたい場合|任意後見契約
将来、認知症などにより判断能力が低下すると、預貯金の管理、介護サービスや施設入所の契約、医療費や施設費の支払いなどを、ご自身だけで進めるのが難しくなってしまいます。
そのような将来に備える契約が、任意後見契約です。
任意後見契約では、ご本人の判断能力がしっかりしているうちに、将来支援してくれる人と、任せる内容をあらかじめ決めておきます。
なお、任意後見契約は、公正証書で作成する必要があります。
任意後見の大きな特徴は、将来支援してくれる人を、ご本人自身が元気なうちに選んでおけることです。
ご家族や信頼できる知人に頼むこともできますが、身近に頼れる方がいない場合には、司法書士などの専門家を任意後見受任者として選ぶ方法もあります。
法定後見では、判断能力が低下した後に家庭裁判所が後見人等を選任します。
これに対し、任意後見では、ご本人の意思で「誰に、どのような支援を任せるか」をあらかじめ決めておくことができます。
ただし、任意後見契約を結んだだけで、すぐに後見が始まるわけではありません。
実際に判断能力が低下した後、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されることで、任意後見人による支援が始まります。
任意後見制度については、法務省でも制度の概要が案内されています。
身近に頼れる親族がいない方や、ご家族に財産管理の負担をかけたくない方にとって、任意後見契約は重要な備えになります。
亡くなった後の手続きを任せたい場合|死後事務委任契約
人が亡くなった後には、ご家族や周囲の方が対応しなければならない手続きが数多くあります。
たとえば、次のような手続きです。
- 葬儀、火葬、納骨に関する手続き
- 役所への届出
- 医療費、施設利用料、公共料金などの精算
- 賃貸住宅や施設の退去手続き
- 家財整理
- 携帯電話、インターネット、各種契約の解約
- 親族や関係者への連絡
これらは、遺言だけでは対応しきれない部分です。
遺言は、主に財産を誰に承継させるかを定めるものです。
一方、死後事務委任契約は、亡くなった後の事務手続きを誰に任せるかを定めるものです。
そのため、財産の承継先は遺言で定め、葬儀や納骨、各種手続きなどは死後事務委任契約で備える、というように組み合わせて準備することが多いです。
近しいご親族がいる方であれば、亡くなった後の手続きをご親族にお願いできるでしょう。
しかし一方で、一人暮らしの方、近くに頼れるご親族がいない方、身寄りがない方、ご親族に負担をかけたくない方にとっては、死後の手続きを誰に任せるのかは大きな不安になりやすいところです。
そのようなときに、死後事務委任契約を専門家と結んでおくと、「自分の亡くなった後のことを、誰がどう進めてくれるのか」という不安を少し軽くすることができます。
財産の承継先を決めておきたい場合|遺言
死後事務委任契約を結んでいても、財産の承継先まで決められるわけではありません。
預貯金、不動産、株式、その他の財産を誰に承継させるかについては、遺言で定めておく必要があります。
特に、一人暮らしでお子様がいない方の場合、相続人が兄弟姉妹や甥姪になることがあります。
相続人がいない場合には、財産の行き先自体が問題になることもあります。
「お世話になった親族に財産を残したい」
「特定の人や団体に財産を渡したい」
「相続人同士の負担や混乱を減らしたい」
このような希望がある場合には、元気なうちに遺言を作成しておくことが大切です。
死後の事務手続きについては死後事務委任契約で備え、財産の行き先については遺言で定める。
このように役割を分けて準備することで、亡くなった後の手続きを進めやすくなります。
遺言を作るだけでなく、実際にその内容を実現してくれる人を決めておくことも大切です。
公正証書遺言などを作成する際には、あわせて遺言執行者を指定しておくと安心です。
預貯金や不動産などの相続手続きを進める人が明確になり、亡くなった後の手続きを任せやすくなります。
身近に手続きを頼める方がいない場合や、ご親族に負担をかけたくない場合には、司法書士などの専門家を遺言執行者として指定される方もいらっしゃいます。
家族信託という選択肢も
財産管理や資産承継の方法として、家族信託を検討する方もいらっしゃいます。
ただし、家族信託では、実際に財産を管理する受託者が必要です。
ご家族やご親族など、信頼して財産管理を任せられる方がいるかどうかが、家族信託を検討するうえで大切なポイントになります。
そのため、身近に財産管理を任せられるご家族・ご親族がいない場合には、家族信託だけでは備えきれない場面も出てきます。
一方で、遠方の甥姪など、信頼できる親族に財産管理や承継について協力してもらえる場合には、家族信託が検討できるでしょう。
家族信託は、不動産や預貯金などの財産管理、将来の資産承継を考えるうえで非常に有効な方法な選択肢となります。
もっとも、本人の生活面の支援や死後の事務まで当然にカバーできる制度ではありません。
そのため、家族信託を検討する場合でも、必要に応じて任意後見契約、死後事務委任契約、遺言などとあわせて考えることが大切です。
家族信託について詳しくは、家族信託のご相談ページでもご案内しています。
どれか一つではなく、必要な備えを組み合わせることが大切です

一人暮らしで身近に頼れる親族がいない方の備えは、どれか一つの契約だけで完結するとは限りません。
たとえば、次のような組み合わせが考えられます。
- 元気なうちは見守り契約で定期的に状況を確認する
- 手続きが負担になってきたら財産管理契約で支援を受ける
- 判断能力が低下した後は任意後見契約により支援を受ける
- 亡くなった後の事務は死後事務委任契約で備える
- 財産の承継先は遺言で定める
大切なのは、最初から制度名をすべて理解することではありません。
「何を誰に任せたいのか」
「いつから支援が必要になりそうか」
「亡くなった後に、どのような手続きを任せたいのか」
こうした希望や不安を整理しながら、ご本人に合った備え方を考えていくことが大切です。
遺言、家族信託、任意後見、死後事務委任などを含めて全体の方針から整理したい方は、生前対策サポートのご相談ページもご覧ください。
司法書士に相談できること
任意後見契約、見守り契約、財産管理契約、死後事務委任契約、遺言は、それぞれ役割が異なります。
どの契約を準備すべきか、どの順番で進めるべきかは、ご本人の生活状況、家族関係、財産内容、将来の希望によって変わります。
司法書士に相談することで、次のようなことを整理できます。
- 将来の不安や希望の整理
- 見守り契約、財産管理契約、任意後見契約、死後事務委任契約の検討
- 遺言書作成の検討
- 公正証書作成に向けた準備
- 家族信託が向くかどうかの確認
- 必要に応じた税理士等の専門家連携
- 任意後見受任者として支援する場合のご相談
- 見守り、財産管理、死後事務について専門家に任せる場合のご相談
司法書士に相談できるのは、契約書や遺言書の作成だけではありません。
事案に応じて、任意後見受任者としての受任や、見守り契約・財産管理契約・死後事務委任契約に基づく継続的なサポートについてもご相談いただけます。
身近に手続きを頼める方がいない場合でも、専門家に任せる形をあらかじめ整えておけば、「いざというときに誰に頼ればよいか」という不安を軽くできます。
輝誠法務事務所では、一人暮らしの方、身近に頼れる親族がいない方、ご家族に負担をかけたくない方からのご相談も承っております。
制度や契約を押しつけるのではなく、ご本人のお話を伺いながら、将来の生活や亡くなった後の手続きに備えられる形を一緒に考えてまいります。
まとめ|元気なうちに準備しておくことが、将来の安心につながります
一人暮らしで身近に頼れる親族がいない場合、将来の生活や亡くなった後の手続きについて、不安を感じる方は少なくありません。
ただ、その不安は、元気なうちに少しずつ準備しておくことで、軽くしていくことができます。
定期的に状況を確認してもらうための見守り契約。
元気なうちからお金や手続きを手伝ってもらうための財産管理契約。
判断能力が低下した後に備えるための任意後見契約。
亡くなった後の手続きを任せるための死後事務委任契約。
財産の承継先を決めておくための遺言。
これらを、ご本人の状況に合わせて組み合わせることで、将来に備えた形を作っていくことができます。
「何から始めればよいか分からない」という段階でも構いません。
まずは、ご自身の不安や希望を整理するところから始めてみましょう。
一人暮らし・身近に頼れる親族がいない方のご相談は輝誠法務事務所へ
司法書士法人輝誠法務事務所では、任意後見契約、見守り契約、財産管理契約、死後事務委任契約、遺言など、将来の生活や死後の手続きに備えるためのご相談を承っております。
ご本人の生活状況、家族関係、財産内容、ご希望を丁寧にお伺いし、必要な備え方をわかりやすくご案内いたします。
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詳しいご案内は、任意後見・見守り契約・死後事務委任のご相談ページもご覧ください。
※本記事は掲載時点の法令・実務運用等を前提として作成しています。法令改正や判例・運用変更等により、最新の取扱いと異なる場合があります。

