相続財産の調査方法|亡くなった方の財産が不明なときの確認方法
相続財産の調査は、相続手続を進めるうえで最初に問題となることの一つです。
実際のご相談でも、「亡くなった方にどのような財産があったのか分からない」というところから相続手続が始まることがあります。
預貯金や不動産があることは何となく分かっていても、どこの金融機関に口座があるのか、他にも不動産があるのか、株式や生命保険、借入金があるのかまでは把握できていないケースもあります。
特に、亡くなった方と離れて暮らしていた場合、相続人同士の関係が薄い場合、相続放棄によって後順位の相続人に相続権が回ってきた場合、火災や災害などで資料が散逸している場合には、財産の全体像を把握するだけでも大きな負担になることがあります。
この記事では、相続財産の調査方法について、預貯金、不動産、株式・投資信託、生命保険、負債などの項目ごとに、一般的な確認方法や注意点をわかりやすく解説します。
目次
9. 相続財産の調査が難しい場合は遺産整理業務の利用も検討しましょう
10. まとめ:相続財産の調査は早めに全体像を把握することが大切です
1. 亡くなった方の財産がわからないことは珍しくありません

相続が発生したとき、すべての財産が一覧表としてきれいに残されているとは限りません。
通帳や権利証、保険証券、証券会社からの郵送物などが整理されていれば調査を進めやすいですが、実際には、何がどこにあるのか分からない状態から始まることも多くあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 亡くなった方と長年別居していた
- 遠方の親族について相続が発生した
- 先順位の相続人が相続放棄をしたため、相続権が回ってきた
- 亡くなった方が一人暮らしで、財産の管理状況が分からない
- 通帳や重要書類の保管場所が分からない
- 火災、災害、家財整理などにより資料が失われている
- 借入金や保証債務があるかもしれない
このような場合でも、相続手続を進めるには、できる限り財産と負債の全体像を確認していく必要があります。
特に、相続税申告が必要となる可能性がある場合や、相続放棄を検討している場合には、限られた期間内に判断しなければならないことがあります。早い段階で調査の方針を立てることが大切です。
2. 相続財産の調査で確認する主なもの

相続財産の調査では、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も確認する必要があります。
主に確認するものは、次のような財産・負債です。
- 預貯金
- 不動産
- 株式、投資信託、証券口座
- 生命保険、共済
- 年金関係
- 自動車、貴金属、動産類
- 貸付金、未収金
- 借入金、クレジットカード債務
- 保証債務
- 未払税金、未払医療費、施設利用料など
相続人の方が把握している財産だけで手続を進めてしまうと、後から別の財産や負債が見つかることがあります。
そのため、通帳、郵送物、契約書、固定資産税の通知、証券会社や保険会社からの書類、登記記録などを確認しながら、財産の種類ごとに調査していくことが重要です。
3. 預貯金・金融機関の調査方法

預貯金の調査では、まず亡くなった方の通帳やキャッシュカードを確認します。
金融機関からの郵送物、インターネットバンキングに関する書類、被相続人のメモ、家計簿、過去の振込控えなども手がかりになります。
取引のあった金融機関が分かる場合には、その金融機関に対して、相続人として残高証明書や取引履歴の取得を依頼することになります。必要となる書類は金融機関によって異なりますが、一般的には戸籍関係書類、相続人であることを確認できる資料、本人確認書類などが求められます。
一方で、通帳やカードが見つからず、どこの金融機関に口座があるのか分からないこともあります。
そのような場合には、亡くなった方の住所地、勤務先、生活圏、過去の住所地などをもとに、利用していた可能性のある金融機関を順に確認していくことがあります。
たとえば、自宅近くの銀行、地元の信用金庫、農協、ゆうちょ銀行、給与や年金の振込先として利用していた可能性のある金融機関などが候補になります。
預貯金の調査は、単に「通帳があるかどうか」を見るだけでは終わりません。通帳の入出金履歴から、保険料の引落し、証券会社への入出金、借入金の返済、賃料収入、配当金の入金など、他の財産や負債につながる手がかりが見つかることもあります。
そのため、預貯金の調査は、相続財産全体を把握するための出発点になることが多いです。
4. 不動産の調査方法

固定資産税の通知や名寄帳を確認する
不動産の調査では、固定資産税の納税通知書や課税明細書が重要な手がかりになります。
毎年、市区町村から送られてくる固定資産税の通知には、課税対象となっている土地や建物の情報が記載されています。そこから不動産の所在や地番、家屋番号などを確認し、登記記録を取得することで、所有者や権利関係を確認できます。
また、同じ市区町村内に他の不動産がないかを確認するために、名寄帳を取得することもあります。
名寄帳とは、その市区町村が固定資産税の課税のために管理している資料で、同一人がその市区町村内に所有している土地や建物を一覧で確認できるものです。
固定資産税の納税通知書に記載されている不動産だけでなく、同じ市区町村内に他の不動産がないかを確認する手がかりになります。
所有不動産記録証明制度を利用する方法もあります
令和8年2月2日から、所有不動産記録証明制度が始まりました。
所有不動産記録証明制度とは、相続人等が、被相続人の氏名・住所などを検索条件として指定し法務局に請求することにより、特定の被相続人が登記簿上の所有者として記録されている全国の不動産を一覧で確認できる制度です。
これにより、亡くなった方がどこに不動産を所有していたのか分からない場合でも、登記簿上の情報をもとに不動産を調査しやすくなりました。なお、請求には一定の手数料がかかります。
もっとも、この制度で確認できるのは、登記簿上の所有者として記録されている不動産です。そのため、登記上の住所や氏名の記録、共有持分、未登記建物、固定資産税上の情報との違いなどによって、確認すべき点が残る場合があります。
そのため、不動産の調査では、所有不動産記録証明制度だけでなく、固定資産税の納税通知書、名寄帳、権利証、登記記録、公図などをあわせて確認することが大切です。
非課税土地や共有地の見落としに注意する
もっとも、不動産の調査では注意が必要です。
自治体によっては、非課税の土地や共有持分などが、固定資産税通知や名寄帳だけでは十分に把握できない場合があります。また、山林、私道、農地、古い共有地などは、相続人が存在を知らないままになっていることもあります。
そのような場合には、権利証や登記識別情報通知、古い売買契約書、固定資産税関係書類、公図、登記記録などを確認しながら、周辺土地の所有関係を調べることがあります。
特に、自宅や実家の周辺に私道、通路部分、隣接地、共有地などがある場合には、建物や宅地だけを見ていると財産を見落とすことがあります。
不動産は、相続登記の対象になるだけでなく、相続税評価や遺産分割協議にも影響します。早い段階で所在や権利関係を確認しておくことが大切です。
5. 株式・投資信託・証券口座の調査方法
証券会社からの書類や通帳履歴を確認する
株式や投資信託については、証券会社からの取引報告書、年間取引報告書、配当金の通知、株主総会関係書類などが手がかりになります。
通帳の入出金履歴から、証券会社との資金移動や配当金の入金が見つかることもあります。
取引していた証券会社が分かる場合には、その証券会社に対して相続手続の照会を行い、残高証明書や保有商品の内容を確認します。
特別口座や証券保管振替機構への照会
一方で、過去に株式を保有していたものの、現在どこの証券会社に口座があるのか分からない場合もあります。
また、現在は処分済みと聞いている場合でも、単元未満株や特別口座に残っている株式などがないか、念のため確認が必要となることがあります。
たとえば、株式の電子化に伴い、証券会社の口座とは別に、信託銀行等の特別口座に株式が残っていることがあります。古い株券、配当金の通知、信託銀行からの郵送物などがある場合には、特別口座の有無を確認する必要があります。
また、証券保管振替機構の登録済加入者情報の開示請求により、振替株式等の口座が開設されている証券会社や信託銀行等を確認できる場合があります。もっとも、この開示請求で分かるのは口座が開設されている証券会社等であり、銘柄名、取引履歴、保有残高などまですべて確認できるわけではありません。具体的な保有内容は、判明した証券会社等に対して個別に確認する必要があります。
非上場会社の株式については、証券会社の照会だけでは分からないことがあります。会社からの郵送物、配当金の入金履歴、株主総会関係書類、被相続人のメモ、過去の契約書類などを手がかりに確認することになります。
株式や投資信託は、見落とされやすい財産の一つです。少額の配当金や古い郵送物が手がかりになることもあるため、資料を処分する前に確認しておくことが大切です。
6. 生命保険や共済、年金関係の確認
生命保険や共済については、保険証券、保険会社からの通知、共済契約に関する書類、通帳の保険料引落しや保険金入金の履歴などを確認します。
死亡保険金は、受取人が指定されている場合、遺産分割の対象となる相続財産とは別に扱われることがあります。しかし、相続税の計算では確認が必要となる場合があります。また、保険金の請求手続をしなければ、受取人が保険金を受け取れないままになってしまうこともあります。
手がかりが少ない場合には、生命保険協会の生命保険契約照会制度により、生命保険契約の有無を照会できる場合があります。生命保険協会では、照会対象者が死亡している場合の法定相続人による照会について、本人確認書類や法定相続情報一覧図などの必要書類を案内しています。
年金関係では、未支給年金、企業年金、個人年金、共済関係の給付などが問題になることがあります。年金事務所や各制度の窓口への確認が必要となる場合もあります。
保険や年金は、通帳の出入金履歴から手がかりが見つかることも多いため、預貯金調査とあわせて確認していくことが重要です。
7. 借入金や保証債務など負債の調査も重要です
相続財産の調査では、プラスの財産だけでなく、借入金や保証債務などの負債も確認する必要があります。
借入金については、金融機関やカード会社からの郵送物、督促状、返済予定表、金銭消費貸借契約書、通帳の引落し履歴などが手がかりになります。
クレジットカード債務、消費者金融、銀行借入れなどについては、信用情報機関に対して、亡くなった方の信用情報の開示を請求できる場合があります。たとえば、JICCでは、亡くなった方の信用情報について、法定相続人などによる郵送での開示手続が案内されています。
また、全国銀行個人信用情報センターでも、本人が亡くなっている場合の相続人等による開示手続が案内されています。
もっとも、信用情報機関への照会で、すべての負債が分かるとは限りません。
個人からの借入れ、親族間の貸し借り、事業上の未払金、保証債務などは、信用情報だけでは把握できないことがあります。そのため、借用書、契約書、督促状、請求書、メール、メモ、不動産登記記録の乙区に記載された抵当権なども確認する必要があります。
負債の有無は、相続放棄を検討するかどうかにも大きく関わります。相続放棄には期限があるため、負債が疑われる場合には、できるだけ早く調査を開始することが重要です。
8. 相続税申告が必要となる場合は期限にも注意が必要です
相続財産の調査は、相続税申告の要否にも関係します。
相続税の申告が必要となる場合には、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に申告と納税を行う必要があります。国税庁も、相続税の申告期限について、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と案内しています。
10か月と聞くと、時間に余裕があるように感じるかもしれません。
しかし、実際には、相続人の調査、戸籍収集、財産調査、不動産評価、預貯金や証券口座の残高確認、生命保険の確認、負債の調査、遺産分割協議、税理士への相談、申告書作成など、多くの作業が必要になります。
特に、財産の全体像が分からない場合には、相続税申告が必要かどうかの判断自体が遅れることがあります。申告が必要であることに後から気付いた場合、十分な検討時間を確保できないおそれもあります。
そのため、相続税が問題になりそうなケースでは、早い段階で相続財産の調査を進め、必要に応じて税理士と連携しながら対応することが大切です。
9. 相続財産の調査が難しい場合は遺産整理業務の利用も検討しましょう

相続財産の調査は、単に書類を集めるだけではありません。
預貯金、不動産、有価証券、生命保険、負債などを横断的に確認し、相続手続全体の見通しを立てる作業です。
相続人が遠方にいる場合、財産の種類が多い場合、資料が少ない場合、疎遠な親族の相続で事情が分からない場合、相続税申告の可能性がある場合には、ご自身だけで調査を進めることが大きな負担になることがあります。
また、財産調査の結果によっては、相続登記、預貯金の解約、証券口座の相続手続、保険金請求、相続放棄、税理士への相談など、次に行うべき手続も変わります。
司法書士法人輝誠法務事務所では、相続財産の調査を含む遺産整理業務のご相談を承っております。
必要に応じて税理士等の専門家とも連携し、相続財産の全体像を整理したうえで、相続手続全体を見据えて対応いたします。
10. まとめ:相続財産の調査は早めに全体像を把握することが大切です
亡くなった方の財産が分からない場合でも、通帳、郵送物、固定資産税の通知、登記記録、証券会社や保険会社からの書類、信用情報などを手がかりに、財産や負債を調査できる場合があります。
もっとも、財産調査は、財産の種類ごとに確認先や必要書類が異なります。不動産、有価証券、生命保険、負債などが関係する場合には、調査の範囲が広がり、手続も複雑になりやすいです。
相続税申告や相続放棄の期限が問題になる場合には、早めに全体像を把握することが特に重要です。
財産の内容が分からずお困りの場合は、資料を保管し、状況を整理したうえで、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。
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